「毎日ハノンを弾いているのに、曲になると薬指や小指がもつれる…」
「大人の練習時間で、60番まで全部弾くなんてムリ!」
そんなふうに悩んでいませんか?
ハノンの練習時間は、1日10分取れれば良い方ですよね。
1日10分だと、ハノンを1番から順に弾いていくだけで時間が終わり、肝心の曲にたどり着けません。
でも実は、ハノンは1番から順番に全部弾かなくても大丈夫です!
第1部の20曲は曲ごとに鍛える指が決まっているので、自分の苦手な指に効く2〜3曲だけ選べば足ります。
この記事で紹介するのは、苦手な指から番号を選ぶ早見表と、選んだ番号をリズムや調を変えて弾く方法の2つ。
- 第1部20曲がどの指を鍛えるかの早見表
- 苦手な指からやる番号を選ぶ手順
- 番号を決めたあとの練習方法3つ
先生がついていない方、自分で練習メニューを組み立てたい方ほど、早見表が役に立ちます。
まずは今日やる番号を1つ決めるところから始めましょう。
指を鍛える60の練習曲集は全部やる必要はない

ハノンは、指そのものを鍛えるための練習曲集です。
60曲が3つの部に分かれていて、部ごとに目的が違います。
まずは自分がどこにいるのかを確かめましょう。
ハノンは第1部・第2部・第3部で目的が違う
ハノンの正式なタイトルは「ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト(Le Pianiste virtuose)」。
フランスのシャルル=ルイ・ハノンが1873年に出版した練習曲集です。
60曲は次の3つに分かれています。
- 第1部(1〜20番):指を独立させ、動きをそろえるための準備練習。
- 第2部(21〜43番):親指くぐり・音階・アルペジオなど、第1部より一段進んだ練習です。
- 第3部(44〜60番):連打・重音・トリルなど、さらに難しい技術の練習。
ハノンと聞いて思い浮かぶ、ドミファソラソファミ…と1段ずつ上がっていく音型は、第1部の20曲です。
つまり、まず向き合うのは最初の20曲だけで足ります。
ハノンの効果は指の独立と音の均等
ハノンが目指しているのは、指が1本ずつ思いどおりに動く状態と、どの指で弾いても音の大きさがそろう状態です。
原典の序文には、4と5の指は特別な練習をしないとほとんど役に立たない、という趣旨の記述があります。
薬指と小指が転ぶ、音が抜ける、和音の中で1音だけ小さい。
こうした悩みに正面から答えるのがハノンの役割です。

ハノンを弾けば曲も上手くなりますか?



曲の表現は曲の練習で作ります。ハノンは指を動かす土台づくりだと思ってください。
だから「ハノンをやったのに曲が上手くならない」と感じたときは、指の土台と曲の練習を分けて考えるとすっきりします。
大人が60番を全部練習するのは非効率
60曲を順番に通す前提は、そもそも忙しい大人にとっては不可能です。
原典の序文には、全曲を1時間ほどで通せると書かれています。
1時間の基礎練習を毎日確保できる大人は、ほとんどいませんよね。
しかも番号ごとに鍛える指が違うので、全部やっても自分に必要な練習は全体の時間のごく一部にしかなりません。
要らない番号は飛ばしてよい、というのが大人のハノンの前提です。
ハノンは何番をやればいい?苦手な指から選ぶ第1部20曲の早見表


ハノン第1部の20曲には、それぞれ「この曲はこの指を鍛える」という目的があります。
原典には特に鍛える指を数字で示すという注記があり、各曲の冒頭に指の番号が並んでいます。
各曲の指の指定をもとに、20曲を鍛える指ごとに4つに分けてみましょう。
第1部(1~20番)は鍛える指が決まっている
ハノン第1部の20曲を鍛える指で分けると、次のとおりです。
| 鍛えたい指・動き | 番号 |
|---|---|
| 薬指と小指 | 1・4・6・7・9・11・13 |
| 中指と薬指(人差し指を含む) | 2・3・10・14 |
| 指を広げる | 12・15・16・17・20 |
| 5本の指すべて | 5・8・18・19 |
表を見ると、薬指と小指を鍛える番号がいちばん多いですよね。
第1部は、弱い指を強い指に追いつかせるために組まれています。
苦手な指の番号を2〜3番だけ選ぶ
まずは1~20番を一通り弾いてみて、苦手な番号を記録しておきましょう。
苦手な番号が分かれば、どこを鍛えればいいのか判断できます。
早見表の中から、苦手の出方ごとにまず試す3曲に絞ると次のとおりです。
- 薬指と小指が転ぶ、音が抜ける → 1番・9番・11番
- 中指と薬指がもつれる、同じ2音を速く交互に弾くと転ぶ → 2番・10番・14番
- 指を広げると手が固まる → 12番・16番・17番
選ぶ番号は2〜3番までにして、5分から10分で終わる量に収めましょう。
苦手な番号が見つからなければ、1番から始めれば間違いありません。
1番は、薬指と小指を広げる第1部の土台にあたる曲です。
同じ番号を続けて、曲の中で止まらなくなったら次の番号へ移りましょう。



番号を増やすより、選んだ2〜3番を毎日弾くほうが効きます。
第2部(21〜43番)は音階・アルペジオへ進む次の段階
第2部の21番以降は、第1部が回るようになってから手をつける段階です。
第2部の23曲は、中身で次の4つに分かれます。
| 番号 | 練習の中身 |
|---|---|
| 21〜31 | 第1部の続き(薬指と小指を鍛える練習・トリルの準備) |
| 32〜38 | 親指の練習(親指くぐりなど、音階の準備) |
| 39・40 | 全調の音階・半音階 |
| 41〜43 | アルペジオ(分散和音) |
音階とアルペジオは、曲の中にそのまま出てくる形です。
第1部の次は、32番からの親指くぐりで準備してから、39番の音階へ進む流れになります。
ハノンの練習方法は「ゆっくり・リズムを変える・調を変える」の3つ


番号が決まったら、次は弾き方です。
同じ番号でも、ゆっくり弾く・リズムを変える・調を変えるの3つで別の練習になります。
ゆっくり弾いて両手の音の粒をそろえる
ハノンは、速さより先に音をそろえるところから始めましょう。
原典のメトロノームの指示は、♩=60から始めて少しずつ上げ、最後は♩=108を目指すというものです。
♩=60は1秒に1拍なので、ゆっくりに感じるかもしれません。
それでも、左右の音が同時に鳴っているかを聞き分けるにはちょうどいい速さでしょう。
速さの進め方は、次の表のとおりです。
| こんなとき | やること |
|---|---|
| 始めるとき | ♩=60で弾く |
| 止まらずに弾けた | メトロノームを10上げる |
| 音が濁った | 片手ずつ弾いて、遅れている手を探す |
| 途中で崩れた | 1つ手前の速さに戻す |
| 最後の目標 | ♩=108 |
リズム変奏・スタッカートで同じ番号を別の動きにする
同じ番号を飽きずに続けるなら、リズムを変えてみましょう。
リズムの変え方は、次の3つです。
| リズム | 聞こえ方 | 弾き方のポイント |
|---|---|---|
| 付点 | タッタ・タッタ | 長い音で指を休ませ、短い音で次の指を素早く落とす |
| 逆付点 | タタッ・タタッ | 付点の逆で、短い音を先に弾く |
| スタッカート | タ・タ・タ・タ | 1音ずつ切って弾く |
1曲を4回弾くなら、楽譜どおり・付点・逆付点・スタッカートで1回ずつ回しましょう。
同じ音型でも、4回とも違う練習に変わります。
ただし、スタッカートは手首に力が入りやすい弾き方です。



リズムを変えて弾いていたら、手首が疲れてきました…



手首が固まったら、その日はそこで止めましょう。痛みをこらえて続けるのは逆効果です。
調を変える:ハ長調以外で弾くと苦手がはっきり出る
ハ長調以外の調で弾くと、ハ長調では隠れていた苦手な指がはっきり出ます。
ハ長調は白鍵だけなので、どの番号も同じ手の形のまま弾けてしまいますよね。
調を変えたときに苦手が出るところは、次の表のとおりです。
| 調を変えると変わること | 苦手が出るところ |
|---|---|
| 黒鍵を弾く位置 | 黒鍵に当たる指が遅れて、音の粒がそろわない |
| 手の形 | 指を広げる番号で、手が固まる |
| 鍵盤の奥行き | 黒鍵の多い調ほど手が奥に入り、薬指と小指が動きにくい |
弾きにくかった調は、苦手な指がまだ追いついていない調です。苦手が出た調を選んで、重点的に練習しましょう。
全音版の教本には、すべての調(長調・短調)で練習するようにと書かれています。
選んだ番号で調を変える手順は、次の3ステップです。最初の調は、♯が1つだけのト長調がおすすめ。
早見表で選んだ番号のうち、いちばん弾き慣れた1曲を選びましょう。新しい番号で移調まで足すと、番号にも調にも慣れないまま終わります。
ソから始めて、途中で出てくるファはすべて黒鍵(ファ♯)で弾きます。テンポは♩=60まで落としてください。
弾きにくかった調に印を付けておくと、次に練習する調で迷いません。私の感覚では、苦手は番号より調に出ます。苦手な調の記録が、そのまま次の練習メニューになるでしょう。
調やリズムを変えたハノンの楽譜は「全調ハノン」で見られる


ハノンは、ハ長調以外の調にも移して練習するのがおすすめです。
でも、移調したハノンの楽譜は、市販されていません。
紙の楽譜だと、頭の中で調を読み替えるしかありませんよね。頭の中での読み替えは負担が大きく、移調練習がなかなか進みません。
そこで、私が作ったのが、ハノンの調をタップで切り替えられる「全調ハノン」です。
全調ハノンは調を選ぶだけで、選んだ調の楽譜が出る
「全調ハノン」は、ハノン第1部の20曲を12の長調に切り替えられるアプリです。
調を選ぶと、選んだ調の楽譜がそのまま画面に出ます。
曲ごと・調ごとに「苦手〜得意」の5段階で記録できるので、苦手な調が見つけやすいでしょう。
まずは今日選んだ番号を、ト長調で開いてみてください。


\ 移調の練習ができる /
↑ブラウザで開くだけ↑
リズムやスタッカートを変えた楽譜も、全調ハノンで確かめられる
「全調ハノン」では、リズムを変えた弾き方も楽譜で確かめられます。
用意しているリズム変奏は、次の6種類。
- 付点
- 逆付点
- スタッカート(全部の音を短く切る)
- 拍アクセント(拍のあたまを強く)
- 裏アクセント(裏拍を強く)
- 2音スラー(2音ずつなめらかにつなげる)
画面の楽譜を見ながら弾けるので、リズムを頭の中で付け替える手間がかかりません。
調とリズムを組み合わせて、1曲を12の調×7通りの弾き方で練習してみましょう。
ハノンのよくある質問


- ハノンの楽譜はどの版を使えばいい?
-
定番は全音楽譜出版社の「全訳ハノンピアノ教本」です。各曲の冒頭に説明文が入っていて、どの指を鍛える曲なのかを確かめられます。迷ったら、まずは全音版を1冊用意しましょう。

ポチップ
- ハノンは毎日何分やればいい?
-
5分から10分、番号にして2〜3番で十分です。ハノンに30分かけて曲の練習が10分になっては、順番が逆ですよね。長さより、毎日同じ番号に触れることを優先してください。時間が取れない日は、選んだ番号を1曲だけ弾いて終わりにします。
- ハノンは何歳から、いつから始めても大丈夫?
-
大人になってから始めても問題ありません。原典の序文にも、1年ほど学んだ生徒から使える教本だと書かれています。目的は指の独立と音の均等なので、年齢より、楽譜を読みながら両手を動かせるかを目安にしてください。
- ハノンとバーナムはどっちがいい?
-
目的が違うので、どちらが上ということはありません。バーナム(バーナムピアノテクニック)は、短いミニ曲を通して体全体の動きを覚える教本です。一方のハノンは、指1本ずつの独立を鍛える教本。退屈で続かないならバーナムから、苦手な指がはっきりしているならハノンから始めましょう。併用しても構いません。
まとめ:ハノンは苦手な指の番号だけを、調を変えて


ハノンは、60曲すべてを順番に弾かなくても大丈夫です。
大人の練習なら、指を鍛える第1部(1〜20番)の20曲から選べば足ります。
第1部の進め方は、次の3ステップ。
- 1〜20番を一通り弾き、弾きにくかった番号を2〜3曲に絞る
- 絞った番号を、メトロノーム♩=60でゆっくり弾いて左右の音をそろえる
- 慣れたら付点やスタッカートでリズムを変え、ハ長調以外の調でも弾く
ハノンは、毎日弾くうちに何も考えずに指を動かすだけの練習になりがちです。
弾き始めのうちは、毎日ハノンに触れる習慣をつけることを優先してください。
同じ番号を同じ弾き方で続けていると、指が音の並びを覚えてしまいます。練習の効き目が、だんだん薄れていくかもしれません。
鍛えたい指と左右の音のそろい方を意識すれば、同じ10分でも中身の濃い練習になるでしょう。
今日はまず苦手な指に効く番号を1つ決めて、ト長調で弾いてみましょう。
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ハノン以外の練習も自分で組み立てたい方には、独学の練習法をまとめた記事がおすすめです。


10分の基礎練習を、鍛える指を意識した10分に変えていきましょう。










